PARANOID ANDROID

140文字以上の主に本についてのつぶやき

『坂を下りてくる人』魚住陽子

今はこの本を読んでいます。

ここにいないものを ここで想うということ── 『水の出会う場所』や『菜飯屋春秋』で知られ、2021年に急逝した作家、魚住陽子が遺した個人誌『花眼』(ホゥエン)からの短編集。

2006年から2011年にかけ、計10号刊行された作家、魚住陽子の個人誌『花眼』。 自身や他の作家の短編はもちろん、自身の心情や近況を綴ったエッセイのような趣があるていねいなあとがきを収録したこの冊子は、装画のチョイスなどにも一貫した美意識を感じさせる。魚住陽子の長年のファンはもちろん、最近その作品に触れた方には特に魅力的なものに違いない。

2021年の急逝後、一周忌を前に発表した『夢の家』に続き、その『花眼』からの10編の短編と著者による全10号分のあとがき、そして『花眼』各号の表紙・裏表紙やその制作背景についてのテキスト(装画を手掛け、寄稿もしている魚住氏の伴侶、加藤閑氏による)をまとめた1冊。

著者さんの急逝後、まさか新刊が読めるとは全く思っていなかったので、発売されるのを知ったときはとても嬉しく思いました。

収められた作品は著者の個人誌『花眼(ホゥエン)』に掲載されていたもので、花眼とは、「近くのものは朧にかすみ、遠くのものだけが晴朗に見渡すことのできる目」、いわゆる老眼のことなのだけど、とても美しい言葉だと思いました。

この本は短編集ですが、どの主人公もさみしい孤独な人ばかりなので、読んでるこちらも「すーん」とした気持ちになります。
必要以上に感情移入してしまうというか。
わたしが今寂しいからでしょうか。

半分と少し読んで、その中で『芙蓉の種を運んだのは誰』が1番よかったです。

それでは読書に戻ります。

人生って、公平なんだか、不公平なんだかわからない。どんなに努力して一生懸命生きても、理由もなく突然取り上げられてしまう。怠けていても、ぼんやりしていても、一ミリづつしか進まなくても、全力疾走していても、その先にあるのは、おんなじ死という水平線。〜『夕立ち』より 167ページ