PARANOID ANDROID

140文字以上の主に本についてのつぶやき

『五月 その他の短篇』アリ・スミス

先程この本を読み終えました。

近所の木に恋する<私>、バグパイプの楽隊に付きまとわれる老女、おとぎ話ふうの語りの反復から立ち上がる予想外の奇譚……現代英語圏を代表する作家のユーモアと不思議に満ちた傑作短篇集。

なかなか一筋縄ではいかない読書体験でした。
まだまだわたしの修行が足らないことを痛感しました。
訳者あとがきから引用すると、

アリ・スミスの小説を読むということは、ふつうの小説を読むのとは異なる体験だ。彼女の書くものは一筋縄ではいかない。重層的で、企みに満ちている。時系列はシャッフルされる。複数の視点のあいだを行ったり来たりする。時には肝心なことがわざと書かれていない。あるいは物語の枠組みをあえて意識させるような書き方をする。だからこそ読み手はページのこちら側に安閑と座ってはいられない。作者の仕掛ける企みと切り結ぶうちに、いつしか物語の中に入り込んでいるような、作者の共犯者になっているような感覚を味わうことになる。あるいは、いっしょに遊んでいるような。〜204ページ

今のわたしと最初はうまく波長があわず、独特の表現方法に慣れてきたのは100ページを超えたあたりからでした。
好みだったのは、表題作の「五月」と「天国」。
「五月」は何年か前に既読だったようですが、まったく覚えてなかったです💦
訳者の岸本佐知子さんの編まれた『変愛小説集』に収録されています。

五月のあの朝、わたしはどうしようもなく恋に落ちてしまった―。木に片思いをしたり、バービー人形と真剣交際したり。変な愛はこんなにも純粋で狂おしい。数多くの熱心な読者を持つ訳者が選び抜いた、奇想天外で切実な想いのつまった11篇。ありふれた恋愛小説とは一味も二味もちがう、「究極の愛」の姿。