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140文字以上の主に本についてのつぶやき

『鴨居羊子の生き方百科』鴨居羊子

この本を読み終わりました。

2021年、没後30年を迎える鴨居羊子は、新聞記者から下着デザイナーを志した異色の人。多才な彼女は、下着デザイナー以外にも、エッセイスト、画家、人形デザイナー、絵本作家としても活躍。早くから女性の自立を訴えた先進的な女性であった。本書は、格好いい女性の生き方のお手本、知的な不良・鴨居羊子の媚びない、甘やかさない、けれど温かい人生相談。作家・江國香織社会学者・上野千鶴子の書き下ろし特別寄稿を収録。

鴨居羊子(1925〜1991)は、日本の下着デザイナー。 スキャンティーの命名者とされる。洋画家の鴨居玲は弟。 〜ウィキペディア

わたしは鴨居羊子さんがとても好きで(昭和30年代にすでに金髪なんですよ!/ 国書刊行会から出ている『鴨居羊子コレクション』全3冊も持っています)、
この本の中でページを割かれていた著者紹介に、「TVドラマや芝居に描かれるなど」と書いてあって、TVあるけど全く見ない暮らしをしているので、なんのドラマだろう?どなたが役をされたのかな?と逆に興味が湧きました。

さてこの本は、1976〜1979年(昭和でいうと51〜54年ですよね)の毎日新聞に掲載された悩み相談の鴨居羊子さんが回答した部分を集めた本なのですが、正直言って辛い読書でした。
ただでさえ、いろんな人の悩みが詰まっていて気持ちが滅入るのに、悩んでいる方々の道徳観がわたしには相容れないというか…。
あとは相談者の文面に嫁に(を)「やる」「もらう」という表現が多々あり、「女性はモノか!」とツッコミを入れながら読んでいました。
まぁこれは時代的に仕方がないのかもしれませんが。
でも当時相談をした若い方って今高齢だけどまだご存命ですよね?
ただでさえ最近の価値観の変化は目まぐるしいのに、シニアさんに価値観のアップデートを望むのは酷かもしれない、と感じました。

でも鴨居羊子さんの回答といったら!
今から見れば古い道徳感、価値観をやんわり否定されてるんですよ、この時代に。
また、なんて人間が大きい方だろう、と感心しながら読んでいました。
人間が大きくなければ悩み相談の回答者など務まらないだろうけれど。
例えば、妻子ある男との恋の果てに悩む会社員の女性への回答の始まりは、

人生って悲しいですね。本当に思うようにゆきませんねえ。あなたのお手紙をみてこんな回答欄で、冷静なペンで、さあーー思い切って別れてしまいなさいーーなんて書くよりも、あなたの背中でもさすってあげた方がよいみたいです。〜80ページ

優しいなぁ。

家庭というのは、女の一方的な負担、気くばりに、やっと支えられているのだということも、かなしいかな、事実です。〜217ページ