PARANOID ANDROID

140文字以上の主に本についてのつぶやき

『ノーマル・ピープル』サニー・ルーニー

サニー・ルーニーの『ノーマル・ピープル』を読み終わる。

現代のアイルランドが舞台の物語。

最初は俯瞰して読んでいたが、いつのまにかマリアンに感情移入してしまい、マリアンの精神状態がどんどん悪くなっていくにつれて「早く救われてほしい」と願いながら読んだ。

タイトルの「ノーマル・ピープル」の意味が、

いい人たちどころか、ペギーやジェイミーが他人を見くだすのが大好きな嫌な人間だったのは本当だ。マリアンは、騙されて、そんな人たちと自分に共通項があると思い込んで、友情に見せかけた市場取り引きに参加していたのかと思うと傷ついた気持ちになった。高校時代ではそんな露骨に社会的な駆け引きをしている集団よりも自分はずっと優れていると思い込んでいたが、実際に親しげにしてくれる人がいたら、彼女だって他の同級生と変わらないようなひどい行いをしたのかもしれないと大学で分かった。自分が誰かよりましだなんてありえないのだ。

247ページ

この一般的には普通の人、多数派と思われる人間の本性を表した痛烈な皮肉だとしたら色んな意味で怖い、と思った。

マリアンの魂のきょうだい(と読んでいて勝手に思っていた)コネルも高校時代の友人の自殺と失恋でうつ状態になってしまい、大学のカウンセラーに話す言葉。

俺はきっと、こういうところに来たら自分はもっとはまるんじゃないかと考えていたんです、彼は言う。その、もっと自分と似たような人間が見つかるんじゃないかって。でも正直、ここで会った連中は高校の奴らよりもひどいものでした。つまり、親がどれだけ金を稼いでいるかって比べてまわっているような奴らばかりで。大げさじゃなくて本当にそういう連中を、俺は目の当たりにしてきたんです。

273ページ

コネルはマリアンと違い、労働者階級出身だが(マリアンは富裕層)、さっき引用したマリアンの気づきと言ってることがほぼ同じだ。

人が人を救うのは烏滸がましいと(わたしは)思うけど、でも人は会話(対話)によって救われることもあるのだなと思わされた物語だった。

人が悲しみのせいで不条理な行動を取るのは、そもそも人の世が不条理なせい

284ページ

コネルに「お前は何か孤独なんじゃないかと思って」と言われたマリアンの答え

それには慣れているから、彼女は言う。実際、私は生まれてからずっとそうだったから。

290ページ

マリアンは賢いな。そして、悲しいな。