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140文字以上の主に本についてのつぶやき

『黒いアリス』トム・デミジョン

絶版文庫のトム・デミジョン『黒いアリス』を手に入れたので読みました。

舞台は1960年代の公民権運動が吹き荒れるアメリカ南部ボルチモア
11歳の白人少女アリスは祖父から莫大な遺産を相続しているが、
統合失調症を患っている(だいぶ軽快している)。
夏休みのある日、アリスは誘拐されるが…。

335ページの物語中半分くらいのところで誘拐の首謀者が明かされるのだけど、
人の皮を被ったケダモノ。
というか、アリスを病気にしたのも計画的だったのだけれど、
その方法が、

子どもを精神分裂病に追い込む方法でもっとも重要なポイントは、愛されていると思いこませてはならないし、またはっきり憎まれていると感じさせてもいけない。できるだけ子どもの心理を宙ぶらりんにしておくことだ。

そのまま引用しました。
これは大人でも病気になっちゃうよ。
古い本(日本語訳は1976年)なので病名の呼称が古いです。
また、アリスを周りの目から隠すために肌の色を黒くする薬を飲ませて黒人の見た目にしてしまうという描写があったり(髪の毛も一味に切られて縮れ毛にされてしまう)、怪しげな白人至上主義の秘密結社が跋扈していたり、吐き気を催すような人種差別者の台詞があったり…と珍書でした。
これは復刊は無理だろうな…。
でも最後までアリスは無事に戻れるのだろうか?とか誘拐の首謀者は捕まるのか、と面白く読みました。

わたしは途中まで家庭教師のゴドウィン先生が犯人の一味のひとりだと信じて疑わなかったです💦

トム・デミジョンという作家は変名で、作家のトマス・M・ディッシュとジョン・スラディックの共同執筆です。

エグい描写や差別的表現があるのでダメな人はダメというか、読む人を選ぶ本だと思うけれど賢いアリスに救われる物語でした。