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140文字以上の主に本についてのつぶやき

2022年に読んだ本ベスト10

2022年に読んでよかった本のベスト10です。

2022年に出版された本、という意味ではありません。

この記事を読んで、興味を持って、かつ、読んでいただけたら嬉しいです。

ほんとうは10冊に絞るのは大変だったけど。

カン・ファギル『別の人』

この小説は劇薬だ。取扱に注意が必要。人によってはフラッシュバックが起きるかもしれない。
だけど、目をそらさないで読む必要がある。

ケイト・モートン『秘密』

めっちゃでっかい秘密だった…ナンテコッタイ!してやられた。 何年振りだろう読書で味わうこんな大きいカタルシスは。 はじめは上巻の第1部3章のせいかもしれないけどなんでこんなにミスリードするような書き方するのだろうとドリーが一人で先走ってるというか早合点してるんだけど… と思ってるところで上巻327ページのヴィヴィアンの台詞で「ですよねー」って思って下巻に突入して逆恨み怖い怖いと読み進めてもう一回197ページのジェリーの台詞で「ですよねー」という読み方をしていて。 上巻第1部3章と同じシーンの下巻第3部30章は読むのがつらかった…。と思ったらここから全てがひっくり返ります。 

チョン・セラン『シソンから、』

死について考えずにすませるためには読むのがいいと知っていた。死に対抗できる最も手軽な方法は読むことだ。〜75ページ に深くうなずく。
多数の多彩な登場人物が繰り広げる群像劇。

ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』

ありきたりな感想で申し訳ないが、むちゃくちゃ良かった。感動した。途中で何度も涙ぐみそうになりながら読んだ。全女性(体が女であるとか心が女性であるとか全部ひっくるめた)に対するエールと受け止めました。

シャーロット・ブロンテジェイン・エア

セント・ジョンのなんという家父長制的な女性観(職業:牧師)に吐き気を覚えながら読みすすめた。

空木春宵『感応グラン=ギニョル』

読み始めはブラック宮木あや子さんっぽいのかな?と思ったら(百合描写のせい)全然違いました。東西東西、ここに収められたる5篇の物語はいずれも読む者を地獄に誘います。それ相応の覚悟がいります。一番考えさせられたのは『徒花物語』。先生は毎年桜の季節にああやって生徒を送り出しているのだろうか?吉屋信子花物語』に大槻ケンヂ『ステーシー』トッピングだけど発想が凄い。好みだったのは『地獄を縫い取る』でした。

朴沙羅『ヘルシンキ 生活の練習』

名言連発。例えば「思いやり」「協調性」「謙虚さ」等々はスキルであって人格や才能ではなく、一歳から死ぬまで練習できるという幼稚園の先生の言葉に目から鱗。協調性なしと通信簿に書かれ続けていた子供の頃のわたしに教えて欲しかった…「困っているなら困っているとおっしゃってください。そうでなければ、私たちはあなたを助けることもできません」これは役所の職員の方の発言なのだけど、とても腑に落ちたというか、自己主張しないのは美徳とか思ってたけど、きちんと自分の気持ちをあらわそうと思った。

魚住陽子『菜飯屋春秋』

こんなにも読み終わるのがもったいなくて切なくていつまでもこの小説の中に揺蕩っていたいと久しぶりに思わせてくれる物語でした。水江さんみたいな方と人生でお知り合いになりたかったな…。ああ、わたしが60歳くらいになったら水江さんみたいになればいいんだ!なれるかな?(笑)初読みの作家さんでしたが、検索したら亡くなられていらっしゃるんですね。なんだか刊行された本もプレミア価格だし。。。でもなんとか手に入れて読んでみたいです。

アリス・リヴァ『みつばちの平和 他一篇』

「夫のことを私はもう愛していないと思う。」からはじまる出だしの文で「これはわたしか?」と完全に掴まれました。一人の既婚女性ジャンヌの日記告白体小説。「いいや、男は恋愛を除くと、我々の相棒にはなれないのだ。我々が男を愛するのをやめたら、男が我々を愛さなくなったら、一緒にしなければならないことなど、本当に何もないのだ。〜アリス・リヴァ

ルイザ・メイ・オルコット『仮面の陰に あるいは女の力』

若草物語』のオルコットが男性名義で1866年に出版した大衆煽情小説。ひとりの女が野心でのし上がっていく物語。所謂悪女なのかもしれないけど、根っからの悪女ではなく大変おもしろかったのだけれど、この物語が出版された年はまだ日本が江戸時代で薩長同盟結んでてちょんまげ結ってたことにビックリ。

おまけ

次点はミランダ・ジュライいちばんここに似合う人

控えめに言っても最高!!!「孤独」とか「心の闇」に囚われた人間や瞬間を描いている短編集だと思いました。そういったキーワードに惹かれる方におすすめします。でも暗い小説ではないよ。


記録によると、去年(2022年)に読んだ本は144冊でした。

今年はもう少し読みたい。