PARANOID ANDROID

140文字以上の主に本についてのつぶやき

狂気の妻たちへ

元々、今年の1月12日にnoteに書いた記事だけど、はてなブログにも書いてみます。
はてなブログさん、はじめましてな実験です)

note.com


ケイト・ザンブレロの『ヒロインズ』を読み終わった。

彼女たちもこの道を、めちゃくちゃになりながら進んでいった ―


すべてのトキシック・ガールのための反逆のマニフェスト


2009年、ケイト・ザンブレノは数年来取り憑かれてきたモダニズム作家の「妻や愛人たち」についてのブログを始めた。ときに偉大なる男性文学者のミューズになり協力者になるいっぽうで、自らの言葉を奪われ、名前を消されてしまった彼女たち。精神の病と診断されて苦悩の中で生涯を終え、あるいは自分も書きたいと思いながら叶わなかった女性たち。大学で働く夫の「妻」としてオハイオ州のアクロンという小さな町に暮らす無名な作家である自分の孤独や無力感、怒りを重ねつつ、ザンブレノは彼女たちをはじめとする文学史上の書き手とヒロインたちを〈私の見えないコミュニティ〉として描き出す。そうするうち、やがて新たに生成していくもうひとつのコミュニティが、そこに連なる。


文学とは何か、狂気とは? それを決めるのは誰か?


家父長の言葉が支配する枠組みの中で声を抑えられた女性たちに寄り添い、彼女たちの物語を響かせようとする試み。あらゆる引用とパーソナルな記録の断片を無限に重ね、織り合わせることで現れる〈私たち〉の姿とは。


本書で主に取り上げられるヒロインと作品たち


ゼルダフィッツジェラルド/ヴィヴィアン・エリオット/ジェイン・ボウルズ/ヴァージニア・ウルフ/エンマ・ボヴァリー(『ボヴァリー夫人』)/アナイス・ニン/ジューン・ミラー/「私」(『黄色い壁紙』シャーロット・パーキンス・ギルマン)エドナ・ポンテリエ(『目覚め』ケイト・ショパン)/ジーン・リース/デューナ・バーンズ/ルイーズ・コレ/コレット・ペニョ(ロール)/ルチア・ジョイス/フランシス・ファーマー/ウニカ・チュルン/アンナ・カヴァン/エリザベス・ハードウィック/メアリー・マッカーシー/シルヴィア・プラス など など … …

ちょっと煽り文句がアレですが💦

この本を今、このタイミングで読めて正解だったと思う。

この本を購入したのは2018年なので、5年間本棚で熟成(積読)させていたことになる。

おそらく買ったばかりの頃読んでいても今ほど理解できなかっただろう。 なにせ、『ジェイン・エア』すらその当時は読んでいなかったのだから。

 

抜書やメモを取りながら読みすすめていたのだが、本書を全部を理解できたとは思っていない。

抜書の中から抜粋。

ひとたび歳をとればもう、ミューズでもなくヴァンプ的なふるまいも通用しない。あっという間に飽きられてしまう。ナジャにうんざりしたブルトンは、入院した彼女を一度も尋ねなかった。 狂気の女性はその魅力が衰えれば笑い者にされ、けなされる。ヴィヴィアンも、バーサも、フランシス・ファーマーも。医師シャルコーによって見世物のように次々と披露された、サルペトリエール病院の労働者階級の女性患者たち。

作品に超越性をもたらすために、彼女は生け贄にされたのだ。こうして芸術という神話創造の錬金術のために、彼女は忘れ去られた。ヒロインは、文学という陰謀の犠牲になった。

自分の人生を書くこと、自分の人生を生きることに対して女性たちが感じる、恥と罪の意識。それは自己検閲という暴力だ。沈黙を強いる一大キャンペーンだ。

あらゆることが、彼の場合は才能に、彼女の場合は病気に結びつけられてしまう。偉大な男性作家たちが、あとから診断されることはめったにない。伝説化された存在の価値が弱められてしまうから。

芸術家と犠牲の問題。犠牲になるのは、誰か(または何か)。彼女は彼の芸術のために、自分を破壊すること、身を捧げることを求められた。ギリシャ神話のイーピゲネイアのように。それなのに彼女自身が芸術家の道を突き進もうとすれば、自己破壊的であることや自己犠牲的であること、火のなかに真っ逆さまに飛び込んでいくようなありかたは非難されてしまう。

あゝ、彼女=彼女たち!

ヴィヴィアン・エリオット、ゼルダフィッツジェラルド、シルビア・プラス、ヴァージニア・ウルフ、ナジャ等々。 カミーユ・クローデルもそうか・・・。

日本にも高村智恵子上林暁の妻繁子、島尾ミホら夫によって書物の中に閉じ込められた狂気の妻たちの系譜がある。

maleに内包されるfemale、夫=家父長。

怒れる著者のルサンチマン的恨みつらみが感じられなくもないが、良い本だった。ペーパーバック風の質感と画の雰囲気もよく本の佇まいもいい。

巻末に参考文献のリストはあるが、出てくる作家と作品のリストを作りながら明日また読み返したいと思っている(ほんとは今から徹夜してこの作業をしたい)。


と、ここまでで1970文字。

出てくる作家と作品リストはまたの機会に掲載したい。